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哲学絵本シリーズ❷「ヘラクレイトスの箴言: ヘラクレイトスの断片と伝承に基づく哲学絵本【断片資料付】」
¥1,760 税込
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謎の哲学者ヘラクレイトスの思想のエッセンスが絵本に!
難解な哲学思想の最高のエッセンスがこの一冊でわかる!
付録に「ヘラクレイトスの箴言」抜粋(日下部吉信訳、日下部先生の許可を得て掲載)を掲載。ヘラクレイトス入門としても最適!
ヘラクレイトスの哲学について ~解説に代えて~
ヘラクレイトスは紀元前六世紀頃から紀元前五世紀頃にかけてエフェソスというイオニア地方のポリスで活躍した哲学者です。「万物流転」「万物の根源は火である」「反対の一致」などが彼の学説として有名で、現代の哲学史でも紹介されています。しかし、その思想は古代からすでに深遠で難解と思われていたようで、今も決定的な理解はありません。その理由は、ヘラクレイトスの著作は失われてしまって、百二十余りの断片しか現代に伝えられていないということもありますが、そもそもその思想が論説ではなく「箴言」というスタイルで綴られていたことが大きく関係しているでしょう。アルテミス神殿に奉納されたと伝えられる短い独立の格言形式から成るヘラクレイトスの「言葉」は、文法的にも、内容的にも多様な解釈が可能で、古代から読者を悩ませてきました。その言葉を聞くものは、あたかもデルフォイの神託(お告げ)を聞くように、自ら考え、解釈を見出す必要がありました。 なぜ、そんな謎めいた仕方でヘラクレイトスは、自らの思想を綴ったのでしょうか?
その真意は知る由もありませんが、事実上、後世の例えばアリストテレスのような「学者」によって、学説として理解されることをこれらの「言葉」が拒んでいることは挙げられるでしょう。事実、そういう学説の積み重ねから成る「博識」をヘラクレイトスほど批判した人はいません。「博識は分別を教えない。なぜならもし教えるのであれば、ヘシオドスにもピュタゴラスにも、クセ ノパネスにもヘカタイオスにも教えたはずだから。」 (日下部吉信訳、以下引用同上)といった断片から明らかなように、ヘラクレイトスは古代ギリシャの知者たちの「博識」を一様に否定しています。つまり、知識を積み上げて、その積み重ねによって世界を理解する、という今日の学問の根底にもある当然と見做され続けてきた態度を否定したのがヘラクレイトスでした。
その「否定」はピタゴラスの批判を通して現代科学にも向けられていると受け止めることもできます。ヘラクレイトスもこの世界の秩序をたとえばピタゴラスがそう考えたように数として様々な現象を把握できること自体は否定はしないでしょうが、その知はそれだけでは「真の智を教えない」からです。それが、「屑山のようにでたらめに積み重ねられた ものからかくも美しい世界秩序が」という断片で象徴的に表現されています。整然とした秩序だけを見ていても「智(ロゴス)」には至らないのはなぜか。それは、その秩序がそれだけで自然の全体なのではなくて、自然は秩序(コスモス)とは反対の混沌(カオス)と表裏一体だからではないでしょうか。善と悪、存在と無、生と死、美と醜といった反対のものが「一つ」であることを認めること、そこに自然はその全体を唯一無二のものとして私たちに現わし、万人に共有の節理(ロゴス)へと導くのではないでしょうか。
そして、このロゴスに耳を傾けるとき、彼の学説として理解されてきたものが、「学説」などでは断じてないことが自ずから理解されることでしょう。「われわれは、同じ川に歩みを踏み入れるとともに、踏み入れない」という有名な断片も、この唯一無二の智の在り方を示していると解釈することもできます。というのも、私たちが「同じ川」という時、「川」という存在を確固とした知識として名指せることが前提されていますが、その前提をヘラクレイトスは否定すると思われるからです。ヘラクレイトスからすれば、「生と死が一つであることを弁える」ようなそのような智だけが智に値するのだから、そもそも物事の一面だけをあたかも標本のように切り取る「知識」はそれだけでは役に立たない、ということになるはずです。「同じ川」がまるで流れから独立してあるかのように「川」に足を踏み入れる人は、実は「川」を取り逃がしてしまっているのです。まさに、私たちが本当に川に足を踏み入れるのだとすれば、頓智のようですが、「同じ川に歩みを踏み入れるとともに、踏み入れない」というわけです。さらに、この箴言は知識を「情報」として積み上げる現代人の常識を否定し、常に世界を節理との関係で「一つのもの」として理解することを促しているようにも思えます。人によっては世界中を旅して多くのことを経験したつもりでも、実は何も経験していない(≒同じ川に歩みを踏み入れるとともに、踏み入れない)ことがあり得るからです。こんな風に、ヘラクレイトスの箴言は肯定的な意味でも、否定的な意味でも解釈でき、いずれにしても本質的な内容を読み取ることができるように書かれているのも心憎いところです。
「万物の根源は火である」というヘラクレイトスにこれまで帰されてきた「学説」にも一言しておきましょう。古代ギリシャでは、「万物の根源」が知者たちによって探求されていました。水であるとか、空気であるといった様々な「答え」が提示されてきましたが、それらはいずれも現代人が想像するような科学以前の未熟な憶測ではありません。彼らは単に、「世界は水でできている」と自分が知りもしない「非科学的な断定」をしたのではなくて、そう述べることによってこの世界の摂理を探求していたのです。ヘラクレイトスもまた「一定の分だけ燃え、一定の分だけ消える」という火の特徴によって自然の根源的な姿を捉えようとしたのではないでしょうか。
このようなヘラクレイトスの断片が訴えかける「智」のエッセンスを親しみやすいストーリーとAIが描いた様々なタッチのイラストによって表現しようとしたのが本絵本です。この絵本によって哲学の奥深い世界を読者の皆さまに感じていただけたら、著者として望外の喜びです。
令和六年十二月 高久弦太
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